「田起こし」の頃の路傍にて

近くの田んぼでは、すでに「田起こし」が行われていた。

昨年の稲刈りが終わった状態で年を越し、空気が乾燥した時期に田んぼの土を掘り起こす。この「田起こし」から、いよいよ今年の稲作が始まるのだ。

「田起こし」された田んぼ
春の田んぼ 2019年3月 宮城県仙台市

作業風景を見ることはできなかったが、まだ寒い時期に掘り起こされた田んぼの土からは、今年も美味しい米を作りたい、との農家の方の熱い思いが伝わってくるようだ。

「田起こし」は3回ほど行い、堅くなった土を掘り起こして、田植えができる状態にまで細かくする。そのための作業だと思っていたが、そればかりではないようである。

「田起こし」された田んぼ
春の田んぼ 2019年3月 宮城県仙台市

「田起こし」の目的や効果は、次のようなものがあるという。

  • 土を乾かす

土を掘り起こすことで土が乾き、微生物による有機態窒素の分解が促進され、植物が吸収しやすい無機態窒素に変化するという。

こうした現象を「乾土効果(かんどこうか)」といい、冬期に水田の土壌を耕起したりしてよく乾燥させると、水稲の生育がよくなることが、昔から経験的に知られていた現象とのことである。
窒素肥料が不足していた時代には、この効果による窒素を活用するすることが有効であったという。
先祖の知恵はすごいな。

乾土効果」の詳細は、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説を参照

  • 肥料を混ぜ込む

肥料をまいてから田起こしをすることで、土に肥料が良く混ざる。

  • 有機物を鋤き込む

稲の切り株や刈り草などの有機物を鋤き込むことで、この有機物を微生物やミミズなどが分解して、養分を作り出す。

  • 土を砕いて団粒化する

土を細かく砕き、植物が腐って出来た有機物である「腐植」とくっついて、 直径1~10mmの小粒になった「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」を作る。

ちなみに「団粒構造」とは土壌学用語で、土壌の粒子が小さなかたまりを形成している構造をいい、保水性に富みながら排水性・通気性もよく、作物の生育に適すると言われている。

ただ土を掘り返しているように見えるが、実際は、その目的や効果を十分に熟知した上で「田起こし」が行われている。
おそらく、農家の方が行っている多くの作業には、こうした先人の知恵や科学的な検証が生かされているのだろう。

稲作はまさに匠の仕事なのかもしれない。

「田起こし」については、田んぼの総合情報サイト「クボタのたんぼ」を参照。 

道路脇のスイセンの芽
道路脇のスイセンの芽 2019年3月 宮城県仙台市

田んぼの傍を、南北に走る道路がある。

この道路脇の草地の中に、スイセンの芽が出ているのを見つけた。

道路脇のスイセンの芽 
道路脇のスイセンの芽 2019年3月 宮城県仙台市

あやうく踏みつけるところであったが、よく見ると、道路沿いに植えられたのだろうか、小さな芽が出ていた。

今はまだ小さく目立たないが、もう少し生育して花が咲けば、ここを通る人の楽しみになるだろう。

ヒメオドリコソウ
ヒメオドリコソウ 2019年3月 宮城県仙台市

この草地には、小さな紫色の花を咲かせたものがある。葉も紫色をしていて、草地の中で紫色の塊になっている。

「ヒメオドリコソウ」という名前の草花らしい。

なんともかわいらしい草花である。

ヒメオドリコソウ
ヒメオドリコソウ 2019年3月 宮城県仙台市

「ウィキペディア」には、以下のような内容が記されている。

ヒメオドリコソウ(姫踊り子草)はシソ科オドリコソウ属でヨーロッパ原産の越年草。日本では明治時代中期に帰化した外来種で、主に本州を中心に分布する。

中国・朝鮮半島から日本に分布するオドリコソウの同属であるが、背丈・葉や花の大きさとも半分以下で小さいため「姫」の名を冠して呼ばれる。花序が環状に並ぶ様子を、踊り子が並んで踊るさまに例えて名づけられたものとされる。


『ウィキペディア(Wikipedia)』「ヒメオドリコソウ」を参照

道路の東側は田んぼで、西側には数軒の農家などが点在している。

畑の風景
畑の風景 2019年3月 宮城県仙台市

道路と農家のとの間にある畑では、白菜など冬の野菜が栽培されている。ビニールハウスの中では、どんな野菜が育っているだろうか。

しばらく眺めていると、農家の方だろうか、畑のご主人らしき人が見回りに来たようである。腕組みをしながら、畑の中を行ったり来たりして、ときどきしゃがみ込んだりしている。
その近くをよく見ると、畑の草むしりをしている婦人がいた。その人は、長くうずくまっていたようで、気がつかないでいた。

何かしら声をかけたのだろう、やがて立ち上がり二人で母屋の方へ向かっていった。

畑の向こうの日没
畑の向こうの日没 2019年3月 宮城県仙台市

まもなく日も暮れようとしている。
「今日も一日ご苦労様」
そんなところではないだろうか。

どこにでもあるような風景ではあるが、農家の方の毎日の営みに感謝したいものである。

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