仙台で初雪が降ってから約一週間後。再びの降雪であったが、今回は少なめであった。
桂島緑地の草地やベンチには、うっすらと雪が積もっていた。
落葉の上にも白い綿のように、ふっくらと覆っていた雪。少し溶けかかっているようだ。
白く雪化粧した緑地の中に、橙色の果実をつけた木がある。
枝の先の方に名札が付いている。タチバナモドキというバラ科の木である。
バラ科だけあって、枝にはトゲがあり、うっかり触れると痛いことになりそうだ。
タチバナモドキは、トキワサンザシやカザンデマリと共にバラ科トキワサンザシ属の中の品種で ある。ピラカンサ属とも言われていて、その和名がトキワサンザシ属という。
トキワサンザシの果実は赤く熟すが、タチバナモドキは橙色になるのが特徴で、どちらもしっかりとしたトゲを持っている。春にはこのトゲが生長して花をつけるそうだ。
細かく見ると違いはあるが、 似たような種類の木のため、 園芸の世界では、総称してピラカンサと言われているようである。
小枝の先に残っている白い雪と、橙色の果実がひときわ目に入ってくる。
「タチバナモドキ」という名前は、果実がミカンの仲間であるタチバナに似ていることによるという。また、果実ではなく、木の姿が橘に似ているからという説もあるそうだ。
5月頃に白い花を咲かせ、11月頃から橙色の果実を付ける常緑の低木である。
元々は中国が原産であるが、明治時代に福羽逸人(ふくばはやと)によって、フランスから 観賞用として導入され、新宿御苑に植えられたのが始まりとのことである。
※東京学芸大学のサイト「タチバナモドキ」の項目を参照
ちなみに、福羽逸人は明治時代の農学・造園・園芸学者で、 フランス・ドイツに留学し、東京の新宿御苑などの造園を担当したほか、東京の道路の並木として、 沢山のプラタナスやユリノキを育てた人である。また、日本におけるイチゴ栽培への貢献でも知られている。
「福羽逸人」 についての詳細は、ウィキペディア「福羽逸人 」 を参照
この時期のタチバナモドキの果実には、毒の成分が含まれていて、野鳥などは食べないのだそうだ。
年が明けて2月頃になると、熟成と共にその毒性が薄くなり、野鳥にとって貴重な食糧になるという。
各地の山野に自生するタチバナモドキは、こうした野鳥が運んでいった種が、芽を出したものとも言われている。
タチバナモドキは、野鳥のためにその毒性を薄めているのだろうか。それとも、春を前にしてその種を弘めるために、わざと食べられるようにしているのだろうか。
その頃には、この果実をついばんでいる野鳥の姿を、一面の雪景色の中で見ることが出来るかもしれない。
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