あっという間に、赤くなったな。
桂島緑地の南側にある東屋の近くに、一本のモミジの木が立っている。
幹にかけられているプレートには「ヤマモミジ」と記されている。
ついこの間までは、枝の一部分で紅葉しているだけで、まだ緑の葉がだいぶ残っていたのだが、このところの朝晩の冷え込みで、一気に紅葉が進んだのだろう。わずかに緑色や黄色の葉はあるものの、全体としては見応えのする紅葉になった。
このヤマモミジは散歩道沿いにあり、よく目立っている。
山の中にあるたくさんの木々の紅葉もきれいだが、一本だけの紅葉も目を引くものである。
表のバス通りの歩道からもよく見えるところにあり、行き来する人の目を楽しませているに違いない。
散歩道から雑木林の中に少し入ったあたりに、真っ赤に紅葉したモミジが見えた。ここにはプレートが無かったので、植物に詳しい知人に聞いたところ、これも「ヤマモミジ」だろうとのことだった。
奥の方に割と太い幹があり、手前の日当たりのよい方に伸びている枝の葉が、紅葉しているようだ。
紅葉の進み方は、個別の木ごとに違いがあり、同じ木の中でも、枝によって違いがあるとのことだ。もっと言えば、同じ枝でも、先端の葉と幹に近い方の葉とでも違いがあり、さらに同じ一枚の葉でも、先端の部分が少し違うようなものも見られる。
根が張る土壌の養分や水分による違い、日光の当たり具合など、置かれた環境により少しずつ違っているという。当然のことだが、それが自然の姿なのだろう。
この緑地には、赤く紅葉するモミジがそれほど多くはないように思う。そのため、この数本のモミジが目立っていて、しみじみと眺めるのかもしれない。
一枚の葉だけに目を向ければ、緑色から黄色へ、そして橙色から赤色へと変化していくことは、時間をかけて、少し長い目で見なければわからない。
しかし、もう少し広く周囲の葉を見たとき、目の前の様々な色の景色は、緑色の葉にもやがて赤色になるという変化が起こる、ということを教えてくれている。
変化の進み具合は違っても、見た目ではわからない速さで確かに進んでいるものだ。
それぞれに紅葉する時間差があるが故に見ることができる、美しい景色といえる。
紅に染まった葉は、やがてその役目を終える。精一杯生きてきた葉は、自らの姿を通して、周りの葉に語りかけているのかもしれない。
コメント