【コラム】11月5日「津波防災の日」”君よ、率先避難者たれ!” 津波避難3原則を学ぶ

2010年8月 福島県相馬市

まぶしい太陽の光。海から吹いてくる涼しい潮風。打ち寄せる波の音。浜辺で遊ぶ子供達の歓声。遠くには、白い鵜の尾崎灯台を望む。
東日本大震災の前年の8月、故郷の海岸を訪れた時の風景である。

2010年8月 福島県相馬市

11月5日は「津波防災の日」である。

この日にちなみ、津波防災についての様々な情報や、番組が発信されているが、ここでは、内閣府などがインターネットで公開している番組の中から、特に関心を持ったものを紹介したい。

11月5日を「津波防災の日」に制定

東日本大震災による甚大な津波被害を踏まえ、2011年(平成23年)6月に、津波対策を総合的かつ効果的に推進することを目的とした「津波対策の推進に関する法律」が制定された。

そして、国民の間に広く津波対策についての理解と関心を深めるために、11月5日を「津波防災の日」とすることが定められている。

11月5日は、1854年(安政元年)11月5日に発生した安政南海地震で、紀州藩広村(現在の和歌山県広川町)を津波が襲った時、濱口梧陵が稲むらに火をつけて、村人を安全な場所に誘導した、という実話によるものである。

詳しくは、内閣府のホームページ「防災情報のページ」を参照

URL http://www.bousai.go.jp/kohou/kouhoubousai/h26/76/special_01.html

この日は「世界津波の日」にも制定された

2015年12月22日に開催された第70回国連総会本会議で「世界津波の日」を定める決議が採択された。

これは、日本をはじめ142か国が共に提案したもので,11月5日を「世界津波の日」として制定され、この決議により,津波の脅威について関心が高まり,その対策が進むことが期待されている。

外務省のホームページ「世界津波の日」による。

URL  https://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/gic/page25_000294.html

自然災害から命を守る まずは子供に伝えたい! 3つのポイント

2018年8月7日に公開された、政府インターネットテレビ「自然災害から命を守る まずは子供に伝えたい! 3つのポイント」という番組がある。

その中で、片田敏孝特任教授(東京大学大学院 情報学環)が「津波避難3原則」について語っている部分を中心に紹介したい。

 

番組では、今や自然災害は、全国どこにでもリスクがあり、いざという時、子供のそばに親や大人がいるとは限らない。そうした災害時には、”子供たち自身が、自分で考えて行動しなければならない”状況もあることを、私たちが理解しておく必要がある、と指摘している。

子供自身が、自分で考えて行動するために、何が必要なのか。大人は、何を子供に伝えたらよいのか。まず、私たち自身が理解しておく必要がある。

続けて番組では、さらに、もう一つ、ぜひ理解しておきたいことが・・・と、次の言葉を投げかけている。

いざという時、大人でも逃げられない

片田敏孝特任教授は、避難警報が出たときの住民の行動について、次のように指摘している。

現に、東日本大震災の前の段階、時々、津波警報出てきておりましたけれど、皆さん、逃げておられなかったですね。

さすがに、東日本大震災を契機に、避難率は上がっておりますけれど、なかなか逃げるという行動には繋がってなかったんですね。

知識を持っていれば逃げる、と考えるのは、恐らく、それだけでは不十分なんだろう・・・。

釜石の教訓

番組では次に、東日本大震災の時にあった一つの例を紹介している。

海からほど近くに建っていた鵜住居(うのすまい)小学校と釜石東中学校。

津波は川を遡上し、校舎全てを呑み込んでしまった。しかし、登校していた小中学生は、全員無事に避難。

生徒全員の命を救ったのは、中学生達のとっさの判断でした。

実は、その生徒達に震災前から指導していたのが、防災教育の様々な活動を行う片田敏孝先生。

津波避難3原則

釜石の生徒達に、震災前から指導していたという「津波避難3原則」について、片田敏孝特任教授が次のように語っている。

1.想定にとらわれるな!

子供達に教えたのは、津波避難3原則ということなんですね。

まずは「想定にとらわれるな」という事を、子供達には言いました。子供達にはハザードマップを配ってですね。
子供達は「ワー!俺んちセーフだ」「おまえの家はアウトだな」というふうに、大騒ぎするわけです。

そんな子供達に、次の津波はもっともっと大きい津波かもしれない。その時に、君逃げなかったらどうなるんだ?

子供達はそこで、ハッと気づくんですね。

ハザードマップっていうのは、たったひとつのシナリオに過ぎないんだ。

ハザードマップの想定は、ひとつのシナリオ

相手は自然。いかようなこともあり得る、ということ。まずこれは、一番最初の原理原則として、一番重要なことだろうと、僕は思うんですね。

2.その状況下において最善を尽くせ!

そして、第2の原則が「最善を尽くせ」。

問題なのは、人は最善を尽くさないことなんだ。

例えば、ハザードマップを見て、「ここまでだから大丈夫だ」「ここは昔から津波が来ていないから大丈夫だ」「みんなが逃げていないから多分大丈夫だ」。

問題なのは最善を尽くさないこと

相手は自然だから、どんなこともあり得るから、だからこそ、僕らがやるべき事は、その日その時出来うる限りの力いっぱい最善を尽くす。

3.率先避難者たれ!

そして、避難原則の三つ目ですけれども、「一番最初に行動を取る君であれ」と、こう教えたんですね。

教室にはですね、たいてい天井に火災報知器が付いていますね。これ鳴ったことあるよね? そのとき君、逃げたか?って聞くと、子供達は逃げてないんですね。

決して僕は逃げないぞって思ってる訳じゃなくて、よし逃げようっていう最後の意志決定が出来ていないだけなんですね。で、行動結果から見ると、逃げていないという状態になります。

そのときに、もし君が一番最初に逃げたとする。みんなは、そうだ逃げた方がいいんだって。そう、これを「集団同調」というふうに言うんですけれども、一人が逃げ始めると、皆がそれに連れだって逃げて行くんだと、そういう状態になるんですね。

一番最初に逃げるという事はですね、君が助かることにもなる。みんなを助けることにもなる。

その教え通り、中学生達が率先して避難したことで、小学生達も後を追うように、一斉に避難。結果、多くの命を救うことにつながった。

番組では、この3原則は、津波だけに限られるものではなく、土砂災害や河川の氾濫など、様々な自然災害に対しても共通する心構えであるとし、家族の命を守る上で大切なのは、こうした避難に対する知識や心構えを、子供達にどう伝えて広めていくかである、と指摘している。

さらに、番組の後半では、全国の小中学校での、様々なアイテムを使った防災教育が広がってい様子を紹介している。

詳しくは、政府インターネットテレビ「自然災害から命を守る まずは子供に伝えたい! 3つのポイント」(動画配信)をご覧いただきたい。

URL https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg17410.html

津波避難3原則の確認

1.想定にとらわれるな!

2.その状況下において最善を尽くせ!

3.率先避難者たれ!

人は時として、人として逃げられない

最後に、別の政府インターネットテレビの番組「津波から命を守る! 津波の避難3原則」の後半で、片田特任教授が、家族で話し合うことの大切さを指摘している部分を紹介したい。

ちゃんと逃げられるということにおいて、すごく重要なことは、人は時として、人として逃げられない、ということなんですね。

やはり、人は本当に我が身が危ないという危機に接した時に考えるのは、我が身の安全じゃないと思いますね。

本当にその人にとって大事な人のことを考え、その中で多くの犠牲が出てくる。この現実を見るときに、あらためて家族で、しっかり、それぞれの命を守りあうということを議論し、そして、確信を持ちあう、信じあうことが大事。

子供たちは、僕がちゃんと逃げれば、お母さんがちゃんと逃げられるんだ、ということ。
お母さんは、うちの子は絶対に逃げているっていう確信があれば、お母さんが逃げられるということ。

家族のいざという時の絆を確認しておくこと、これがお互いの命を守るということの実行性の第一歩だろうと、僕は思っています。

番組では、いざという時、想定にとらわれず、集団の中で、自分が率先して避難する。家族も皆、逃げていることを信じて。それが「津波」から命を守り抜くことにつながる、と指摘している。

詳細は、2016年10月27日公開の政府インターネットテレビ「津波から命を守る! 津波の避難3原則」(動画配信)をご覧いただきたい。

URL https://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg14286.html?nt=1

 

本稿は、インターネット動画番組で画面に表示された字幕を参考に、文字に起こしたものであり、詳細は本編をご覧いただきたい。

自然災害から命を守るために、いくらかでも参考になれば幸いである。

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